アイスを伝統の味で包み込む
きんつば×アイスの組み合わせとは、どんなものだろうと思って取材に訪れた。「きんつばあいす」は、丁寧に手作りされた薄皮と、やさしい味の餡子で冷たいアイスをふんわりと包み込んでいる。先代のときに誕生した商品は発売してから約20年の月日が経ち、今では定番の人気スイーツになった。バニラと抹茶は通年で販売しているが、そのほかの味は季節限定。今年はチョコレートとりんご味が新たに登場し、まるで洋菓子のような味わいだ。
昔から変わらない、餡子と皮
餡子を皮で包む「きんつば」は、とてもシンプルなお菓子。素材の味がダイレクトに伝わるからこそ、昔から変わらない材料と作り方を守り続けている。餡子は北海道産の小豆を使用。週に何回かまとめて炊いており、熱伝導率のいい銅鍋で様子を見極めながら作業していく。毎朝1枚ずつ手焼きする皮も、銅板を使っての熱い作業。餡子と同じく日持ちをさせるものは入っていないので、その日に焼いた皮を使い、身体にやさしい味を届ける。
スイーツ作りの裏側を知る
朝に焼いた皮の熱がとれ、少し半生のような水分が残った状態から作業はスタート。きんつば用に丸くくり抜いた餡子を6等分にし、手でなじませる。皮の上にバニラアイスと餡子を乗せ、皮をかぶせたら手早くフィルムで包んでいく。アイスが溶けないようにスピーディーな作業は、”圧巻”としか言いようがない。「きんつばあいす」の裏側にある工程を知ることで、冷たいアイスがよりおいしく感じる気がした。
明治末から続く、歴史を紡ぐ
長い歴史のある『まつしまや』は、現在5代目の松島陽一さんが継いでいる。最初はお店を継ぐ気持ちはなく、金沢で会社員として働いていた。3代目の祖父が年を重ねてきたころに少しずつ意識が変わり、勤務先のお客さんの紹介で洋菓子店で4年勉強。その洋菓子の腕を買われて、高岡の和菓子店で3年修行したという。その後、父と2人でスタートし、地元で商売する難しさを感じつつ地域に馴染むようにいろんな所へ顔を出した。「人との繋がりで成り立っていると思うので、目に見えない部分が大事ですね」と、松島さんは話す。
和と洋の融合で広がる可能性
洋菓子店での経験を活かしながら、新しいお菓子作りにも取り組んでいる。「生きんつば」や「きんつばケーキ」など、餡子と皮をベースに生クリームやフルーツを入れたスイーツが好評だ。白餡にイチゴやキウイを組み合わせており、ほかにも相性のいいもので新しい味を作りたいと意気込む。地元に根づいて、長年愛され続ける『まつしまや』。さまざまな可能性とともに、松島さんは今日もここで「きんつば」作りに励んでいる。