「ねこのくら工房」とやまものセット

五箇山の伝統食「堅豆腐」

豆腐に鎹(かすがい)、豆腐メンタル。「豆腐」はときに、柔らかさや脆さの象徴とされることがある。しかし、南砺市・五箇山の伝統食「堅豆腐」は、縄で縛っても形が崩れないほどにしっかりとしていて、一般の豆腐のイメージとは少し違う。水分が少なくタンパク質が凝縮、日持ちもするため、雪深いこの地区では古くからタンパク源として重宝されている。『ねこのくら工房』で、五箇山に伝わる堅豆腐の話を聞いてみた。

しっかりと角が立つ弾力が特徴
世界遺産の合掌造り集落(相倉)より車で5分ほど

無添加へのこだわり

『ねこのくら工房』の豆腐づくりの大きなこだわりが、合成添加物を使わないこと。原材料は、富山県産大豆「エンレイ」に、天然のにがり、山の湧き水を使用している。大豆を煮沸するときに発生する泡は、取り除くのが豆腐づくりのセオリー。ここでは消泡剤を使わずに網ですくって泡を取る。身体にやさしく、食べたときの後味が良い豆腐に仕上げている。

豆乳の濃度、にがりの量、気温など、さまざまな条件が関係するため、高い技術が必要
代表の宮脇さん。木工職人を経て豆腐職人になった
手早い作業で豆腐を成型していく

揚げてわかる、素材の違い

工房の豆腐を作っている隣の部屋では、豆腐を使った加工品が作られている。握りこぶしほどの大きな「がんもどき」には、タケノコやニンジン、ズイキなど7種の具材が使われている。各地へ評判が広がり、今ではがんもどきの委託製造もおこなっているという。圧搾法で抽出された菜種油で揚げられるのは「あげ」。低温から高温へ移して、20分ほどかけて2度揚げされる。分厚く大きいが、油っこさを感じないのは、素材を厳選しているからこそ。

がんもどきの具材は練りこまず、中心において包み込む
菜種に圧をかけて抽出した油で揚げる。香ばしい香りが感じられる
「がんもどき」は、煮て食べるのがおすすめ。出汁をいっぱい吸って膨らみ、よりおいしさが増す
「あげ」は、両面をこんがりと焼いたシンプルな食べ方で、サクッとした表面とふんわりした内側の食感が楽しめる

地元事業者との繋がりで、五箇山を盛り上げる

商品の素材や背景を聞くと、たびたび地元の生産者や事業者の名前を耳にする。堅豆腐を漬け込んだ「平家漬け」シリーズをはじめ、地元農家のトマトでゼリーを作ったり、お菓子屋さんに豆乳を卸したりもしている。2022年6月から五箇山を中心に販売が始まった「堅豆腐の缶詰」もその一つで、『JAなんと』と共同で開発した。通常は日持ちが5日ほどの堅豆腐が、缶詰にすることで約3年も保存できるようになった。手土産としても防災の備蓄食としても、今後の展開はさらに広がりそうだ。

ゆず味噌で漬け込んだ豆腐と、赤かぶの漬物
堅豆腐のほか、赤かぶ、かぼちゃ、煮豆昆布、黒大豆煮豆の5種類を展開

伝統食を現代食へ

大豆の消費を促進したいと、大豆を使ったテリーヌやソーセージ、ベーコン、餃子など、さまざまなアレンジ商品に着手してきた『ねこのくら工房』。「コンビニなどでよく見かけるようになったプロテインバーは、まさに昔からある五箇山の堅豆腐ですよ」と、食彩師の細川さんは笑って教えてくれた。堅豆腐のおすすめの食べ方を聞けば、サラダやトマトでイタリアン仕立てにする豆腐ステーキなどの食べ方が真っ先に出てきた。伝統食を現代食へ。日々の食卓に取り入れることで、地域の伝統をこれからも繋いでいく。

製造・加工・商品開発など、女性が活躍している
「堅豆腐」にトマトソース、とろけるチーズでトースト風に
「堅豆腐」はサッパリかつ食べ応えがあり、サラダにはぴったり