富山湾に生息、希少性の高い白エビ
富山湾では、4〜11月に白エビ漁が行われる。希少性の高さから資源保護のためのルールが厳しく設けられていて、すべての船が自由に漁に行けるわけではない。漁が可能なシーズンにも休漁期間が設けられるほどだ。数年前の夏、新湊漁港から「白えび漁観光船」に乗って、漁の様子を見た。乗船したのは、その日の漁を休んでいた漁船だ。網が曳かれると、薄紅の姿をした大量の白エビが揚がった。漁船の甲板のカゴは美しい白エビでいっぱいになった。
新湊産の白エビを、地元で販売
『白エビ壱番屋』は、新湊漁港から車で5分もかからない場所にある。もともと小売店や飲食店向けの卸業をしていたが、2014年に直営店をオープンした。社長の棚辺芳彦さんは「一つひとつ剥くのが珍しがられ、以前からテレビの取材も多かった。お客さんも頻繁に買いに来てくれて、店を開くことを決めました」と話す。『海王丸パーク』『新湊きっときと市場』といったベイエリアの観光スポットからもアクセスしやすい。
至福の旨みを伝える、刺身と昆布締め
刺身と昆布締めのセットは、白エビの中でも贅沢な食べ方の2トップと呼べるだろう。口に運ぶと、刺身はトロリとした舌触りと穏やかな甘みを感じられる。昆布の風味を加えた昆布締めも格別で、粘りのあるプリッとした食べ応えに魅了されるだろう。至福の味わいは、人が集まる特別な日、記念日や祝い事の席に華を添えてくれる。冷凍の状態で販売しているので、食べるときは前日に冷蔵庫に入れるか、2時間ほど常温で置いておこう。
たくさんの人に喜んでほしい
実は棚辺さんは、白エビの刺身を食べることがほぼない。理由を聞くと「母や妻、従業員さんが一生懸命剥いてくれた苦労を知っているので、多くの人に喜んで食べてほしいし、その方が自分もうれしい」と教えてくれた。剥いた殻も無駄にせず、近くにある菓子店にすべて販売し、せんべいの原料に使われるという。新湊では地域をあげて白エビを大切にしている。漁から消費の方法まで、すべてがサステナブルな未来へとつながっている。