菅笠の一大産地・福岡町
日本の伝統的な工芸品「菅笠」。高岡市の西部にある福岡町は、この菅笠の一大生産地で、日本全国の90%のシェアを誇る。菅笠は、雨や日を除けるために被られ、古くから農業を支えている一方で、祭りなどでは音頭や舞のなかの小道具として使われている。その時に欠かせないのが、菅笠を彩る水引の存在。『タキ紙店』は、紙の専門店として、水引で地域の産業と伝統的な文化を継承している。
地域の紙店から伝統産業としての水引
『タキ紙店』は、明治時代に菅笠の間に挟む和紙を売る商売から始まった。以降、紙を扱うお店として、地域の冠婚葬祭や祭りの際に頼りにされてきた。水引は、店主の宇田規美代さんのお祖母さんが作り始め、その技術が伝承され、今に繋がっている。今年開かれた「G7富山・金沢教育大臣会合」では、外国からの賓客への富山の土産に宇田さんの水引が飾り付けられ、地域を越えてその実力は認められている。
紙と紐でさまざまな表現をする
宇田さんが作る祝儀袋や水引は特別な作品が多い。厚手で、ちりめんのようなしわがある「檀紙(だんし)」を使って、さまざまな折り方をされる祝儀袋は立体的に交差していて、特別感やフォーマルさが伝わる。水引は、一般的な慶事の際に祝儀袋にかけるものから、オーダーに合わせた動物やキャラクターをモチーフにしたものまで、さまざまな色の水引を巧みに組み合わせて、かたちを作り出している。
日本の伝統文化と思いやりを大切に
宇田さんによれば、北陸地方は古くから派手で豪華な水引が盛んに作れていたそう。ただ水引を派手にするだけでなく、宇田さんが大切にしているのは、日本の伝統文化や思いやりの心。その一つが、結婚の際の結納の儀だ。現在では、結納の儀を行わないカップルも多いが、宇田さんは「結納は責任と誠意」と言う。二人や家族にとっての大事な節目には、特別な祝儀袋と水引で誠意を示すことで、日本の伝統文化をこれからも伝えていく。