六芳焼

平成の名水百選「弓の清水」

高岡市の常国地区には、「弓の清水」という湧き水がある。寿永2年(1183年)の「源平合戦」で、木曽義仲が平氏軍と戦うためにこの地を通った際、兵士の喉の渇きを潤すため地に矢を放ったところ、水が湧き出たと言い伝えられている。1900年に、この湧き水のほど近くに『松原清松堂』は創業した。店の代名詞ともなった「六芳焼」は、初代がこの湧き水を使って作ったのが始まりで、銘菓として着々と地元に根付いていった。

湧き水の「弓の清水」
個包装で販売されている「六芳焼」

地域に和菓子を広めたお店

現店主の松原喜久雄さんは4代目。創業当時から店は今と同じ場所にあったが、当初はわらじなどを販売する雑貨屋を営んでいた。そのころは、地域に和菓子は浸透しておらず、雑貨と一緒に買ってもらえるようにと、たまに店先でどら焼きやまんじゅうなどの和菓子を作り、販売していたことが今の「六芳焼」をはじめとする和菓子作りに繋がっている。昭和40年(1965年)ころ、喜久雄さんの先代で店舗を改装して半分を和菓子屋にしたのを境に、商品数を増やし営業が本格化した。

雑貨屋を営んでいたころの『松原清松堂』
1997年にできた中田店には、多くの商品が並ぶ

手作業で焼き上げる「六芳焼」

「六芳焼」の特徴は、六角の形にある。亀の甲羅に似た形で、古くから縁起の良い形とされている。特徴的な六角形は、販売当初から今も変わらず手作業で焼き上げられている。2種の小麦を合わせた生地でこしあんを包み、丸く成型した後に、側面を6回に分けて銅板に押し当てて形づける。途中、きれいな形になるよう生地を冷ましながら進めるため、すべての面を焼き上げるには、半日ほどの時間がかかる。

六角形の形が特賞の「六芳焼」
手際よく返し、両面を焼き上げる
側面は、6方向を順番に焼き上げていく

地域の銘菓として根付いていく

油を使わずに焼き上げるため、小麦と小豆のやさしい味わいと、ごまの風味がふんわりと口に広がる「六芳焼」。以前は、近隣の売薬さんを通じて県外の人に渡される機会も多く、その味わいに「また買ってきてほしい」と喜ばれ、手土産としても浸透したという。今でも、ふるさとの手土産として、あいさつには付きものだと地域のなかで考えられるほどで、冠婚葬祭や家族や地域の集まりにも重宝されている。丁寧に真心を込めて焼かれるお菓子は、見た目や味を通して、食べる人にも伝わり、銘菓として今も愛され続けている。

ほど良くしっとりとした食感も特徴
北海道産の小豆を厳選して使用
大きさの異なるものやまとめ買いの注文も多い