高道フィナンシェ富山、ハレとケマドレーヌ

銀世界が、発酵文化を発展させた

かつて富山は、冬になると深い雪に閉ざされた。そのおかげで発酵文化が発展し、現在の暮らしにも受け継がれている。かぶら寿司や麹味噌、日本酒は、寒いからこそ発酵がゆっくりと静かに進んで、深みのある味が生まれる。近年は塩麹や醤油麹を使った料理を食べる機会が増えたが、もはやブームを越えて冷蔵庫の定番調味料になった。『糀ASOBI』の中山緑さんは、麹に魅了され人生を導かれた。挑戦を繰り返し、富山から麹文化を普及させている。

麹との出会いで運命を変えた中山緑さん
お店は砺波チューリップ公園の側にある

麹でロールケーキを極める

中山さんが麹を意識するようになったのは、発酵食大学(石川)に通う妹さんの影響だ。塩麹を使った料理に感動したことが現在につながっている。同校で学び、家事や子育ての合間に、自宅で発酵食の料理教室も開いた。そんなある日、姪を連れてスーパースイーツ専門学校(石川)に見学に行き、学長である辻口博啓さんの考えに触れた。「麹で何かを極めたい」。そう考えてロールケーキの開発に取りかかり、4年かけて納得のいく味に辿り着いた。

お菓子は少量ずつ作り、いつも出来たてを販売している
お菓子作りは、すべての材料にこだわる。

富山を味わう、高道フィナンシェ

2017年、ロールケーキ専門店を開いた。しかし生菓子だけでは、日持ちがしないので遠方の人に食べてもらうことができず、麹の普及という目標が達成できない。そこで着手したのがフィナンシェの開発。「ロールケーキに近い味にしたい」という想いが強く、バターに頼ることなく、米油と米粉、そして米麹の力を借りてしっとりと焼き上げた。海洋深層水や庄川ゆず、富山エゴマなど、富山の豊かな恵みを一つひとつから感じられる。

富山愛にあふれた「高道(たかんど)フィナンシェ」
店内に行儀よく並んだ姿もかわいい

幸せを運ぶ、ハレとケマドレーヌ

ハレとケマドレーヌに使うのは「何をするにも吉」と言われる大安に産まれた卵。特別な卵を使っているから、お祝いや記念日に心を伝える存在になってくれる。中山さんは「2口ほどで食べ切れる大きさで、忙しいときのおやつにぴったり」と話すが、特別な卵のおいしさと上質な素材の組み合わせのマドレーヌは、お菓子にまつわる物語に心をときめかせながら、ゆっくりと堪能したい。

お祝いや記念日に贈りたい「ハレとケマドレーヌ」
大安に採取した卵と聞くだけで、食べると良いことがありそうな気がする
美しい卵から、おいしくて幸せになれるマドレーヌが生まれる

美人になる背徳感のないお菓子を作る

麹はもちろん、米粉や米油、豆乳水など、お菓子に使う素材は選び抜いたものばかり。米粉や卵のタンパク質は麹が分解してくれるから、食べた後も体への負担が少ないという。「糀ASOBIは、美人になる背徳感のないお菓子を作ることにしているの」と中山さん。ハレとケシリーズの拡大やパンの開発など、いつも麹文化の普及に向けて新しいことを考えている。続々と発信されるおいしい知らせを、心待ちにしていよう。

ショーケースのプリンやシフォンケーキ、ソフトクリームにも麹を使用
店内掲示で、こだわりの材料を紹介している