芍薬 切り花

県内随一の生産地

富山市の八尾、大沢野、大山、婦中の4地区を取りまとめている『JAあおば』。生姜やえごまなどの生産が盛んな地区だが、5月に出荷の最盛期を迎える「芍薬(シャクヤク)」の生産量は、県内トップクラス。この10年で約7倍ほどに増え、令和5度には13万本の出荷を見込んでいる。芍薬は、一度植えれば毎年同じ時期に花を咲かせる宿根草(多年草)。他の作物と並行しながら空いている畑で栽培ができ、鳥獣からの害にも強いことから、この地域での生産が盛んになったとされている。

背丈や開花時期など品種により育ち方もさまざま
組合内の約50の農家が芍薬の生産に携わる
中央の主の芽が育つよう、周りに出るわき芽をとる世話が必要

さまざまな芍薬が楽しめる5月

桜前線のように、芍薬の開花時期も九州や西日本から順にやってくる。管内では、市場に出回らない品種を含めて約155品種が栽培されていて、極早生(ごくわせ)や早生(わせ)と呼ばれる開花の早い品種は、例年4月下旬~5月初旬に出荷が始まる。『JAあおば』の芍薬がもっとも楽しめるのは5月に入ってから。毎年の最盛期にあわせて「シャクヤクフェア」という販売会が、管内の直売所『みのり館(大沢野)』と『ほほえみ館(婦中)』で開かれる。2023年は、5月7日(日)~15日(月)まで開催予定。

ビニールをかぶせること温度を調整し、出荷調整をする
目視と手の感覚で開花の時期を見極めている
東京や大阪、京都などの市場にも発送される
出荷前の念入りな検品がクオリティを保つ秘訣
10種類以上の芍薬が並ぶ「シャクヤクフェア」

母の日には芍薬の花を

古くから、美しい人を形容するときに使われることのある芍薬。「楊貴妃」、「クレオパトラ」をはじめ、きらびやかな名前が付いた品種がいくつもある。花が大きく色彩も豊かで、プレゼントにも喜ばれる。馴染みの品種だけでなく、次々に新しい品種が世に出回り、トレンドも移りかわっているそうで、今年の母の日には感謝の気持ちを添えて贈ってみるのもよいだろう。

ワインレッドの「レッドチャーム」は、存在感のある見た目とバラのような香りが特徴。「ピンクハワイアンコーラル」は、ピンク色の退色が楽しめる。

黄色い「レモンシフォン」は大輪で、開くと20㎝ほどになる。牡丹と掛け合わせたハイブリット種の一つ「カナリーブリリアント」。スモーキーなピンク色が特徴的。濃いピンク色の「ルーズベルト」は八重咲でボリュームがある。

希少品種の「レモンドリーム」は、黄色のふわふわとした見た目が愛らしい。赤い花は「スカーレットオハラ」。開いたときに花芯の黄色とのアクセントが目を引く。「スクランティドゥアンブシャス」は淡いピンク色の花で、香り高いのが特徴。

花が大きいため、1輪で挿しても映える
退色品種は、咲き始めからの色の変化を見るのも一つの楽しみ

全国的な生産地を目指して

芍薬が出荷できるようになるまでには、植えてから少なくとも3年はかかるという。それでも『JAあおば』では、既存の品種の作付けを増やすだけでなく、「少数でも多品種の栽培」をテーマに、新しい品種の栽培にも毎年チャレンジしている。職員であり、芍薬の生産者でもある吉沢さんは「年間出荷量をますます増やしたい」と先を見据えている。5月の「シャクヤクフェア」は、県内市場には出回らない珍しい品種を多くの人に知ってもらうチャンスでもある。全国的な生産地を目指して、まずは地元から芍薬を広めていく。

約40品種を栽培する吉沢さんの芍薬畑
希少な品種の栽培にも積極的に取り組む