昆布じめ3点セット

富山ならではの味を提案

目の前に富山城があり、中心街・総曲輪の一角にある老舗鮮魚店『志満屋』には、数多くの新鮮な魚介が集まる。その鮮度を維持したまま、富山ならではの味を提供できないかと考案されたのが「昆布じめ」「西京漬け」「新巻鮭」。昆布や味噌、こうじなど、富山では馴染みのある保存食を手土産や贈り物として渡せるようにパッケージも一新した。今回は、郷土料理としても代表的な「昆布じめ」を詳しくご紹介する。

富山の味噌を使った「西京漬け」
代々受け継いできた方法で熟成させる「新巻鮭」
シンプルに焼いていただく

試行錯誤の末にたどり着いた

「昆布じめ」は食材を昆布で挟むことで、水分が昆布に吸われて身が引き締まり、昆布の旨みが食材に移ることで深い味わいになる。特にお店で人気なのは、サス・甘エビ・アオリイカの3種で、サスは4段重ねにしてあるのがこだわり。食材によって水分量が違うことから、昆布の厚さや枚数などを試行錯誤し、一番おいしいと感じる味にたどり着いた。4つ重ねることで重石をした際に圧力が大きくかかり、味に深みが増す。

北海道の真昆布を使用
4段に重なった、サスの昆布じめ

一つひとつの工程を大事にする

昆布を挟む前後の工程も、丁寧な仕事ぶりが見てとれる。サスは冊を厚めに大きく切り、昆布の上に隙間なく敷き詰めていく。ラップで固定したら、重石をして2日ほど寝かせて味を染みこませるという。アオリイカはとても細かく切り込みが入っており、味が染みこみやすく、食べやすく、甘みが出るような工夫も。アオリイカと甘エビは2段重ねで、甘エビの1段目はおぼろ昆布を使用。上と下で味の変化が楽しめる。

厚く大きめにカットされた、サスの切り身
昆布の上に隙間なく敷き詰める
細かい切り込みが入った、アオリイカの昆布じめ
甘エビの昆布じめは、おぼろ昆布がのっている
厳選された素材で、昆布じめを作る

江戸時代から続く鮮魚店

江戸時代、松川といたち川の合流付近は「木町の浜」と呼ばれ、たくさんの舟が行き来をしていたそうだ。その近くには魚市場があり、『志満屋』も最初はそこで店を構えていたが、昭和3年に現在の総曲輪へ移転。昔は小売が中心だったようで、戦後あたりから卸売をやるようになった。寿司屋さんや居酒屋さんの要望に合わせて、業務用の魚などをはじめとした幅広い品揃えは今日まで続いている。

松川といたち川の合流地点
戦前からある法被。昔はこれを着て仕事をしていた
大きな水槽の中には、新鮮な魚介がたくさん入っている

数多くの仕入れ先が強み

卸先の料理店が求めるものに応えるべく、県内外に多くの仕入れルートを持っている。富山の各漁港の仲卸業者や卸売市場との繋がりを活用して、富山の鮮魚はもちろん、北陸近海や他の地域からも取り寄せるなど柔軟に対応。店先には大きな水槽があり、生きた状態で新鮮な魚介を保管している。今は7代目がお店を受け継ぎ、新たな歴史を歩み始めた。富山の食文化をこれからも担ってほしいと心から願うばかりだ。

昆布の旨みが染みこんだ、3種の昆布じめ
醤油とお好みでわさびも付けて