約250年の歴史を持つ井波彫刻
南砺市井波は、2018年に「宮大工の鑿(のみ)一丁から生まれた木彫刻美術館・井波」として日本遺産に認定されました。瑞泉寺の表参道にあたる八日町通りを中心に、約200名の彫刻師が工房を構えています。格子戸のある町屋と石畳の道を歩いていると、木彫りの看板や表札があったり、軒下に木彫りの猫が隠れていたりと、街全体がまるで木彫刻の美術館のよう。彫刻師たちは250年もの歴史を持つ井波彫刻の技を守りながら、自分の作品と向き合っています。
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瑞泉寺の門前に工房を構える
瑞泉寺門前に『塔』を構える木彫刻師の池田塔さんは、九州出身で井波に来て約20年になります。彫刻師を目指したのは、この町へ旅行に来たのがきっかけ。瑞泉寺の彫刻に夢とロマンを感じ、腹をくくって井波彫刻師に弟子入りしたそうです。親方の家で5年間の住み込み修業を経て独立。以前は自宅で仕事をしていましたが、7年前に八日町通りに工房を持ちました。目の前の通りを観光客が行き交います。
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200〜300本もの鑿(のみ)を使い分ける
鑿(のみ)だけで精緻で滑らかな形を作り出すのが、井波彫刻の最大の特徴です。鑿は大まかに粗削りと仕上げ用に分けられており、約200本を使い分けています。金槌(かなづち)で鑿の背をトントンとリズミカルに打ち、迷うことなく目指す形にしていきます。8〜9月は「天神様」の制作が佳境を迎えます。富山では県西部を中心に、井波彫刻の「天神様」を飾る風習があり、長男が誕生すると母方の実家から秋ごろに「天神様」が贈られ、12月25日に床の間に飾られるのです。
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「天神様」に長男の未来への思いを託す
池田さんは、年ごとに表情やポーズ、体格の違った「天神様」を作ることにしています。実際の制作に入る前に粘土で原型を作って、その年の「天神様」の姿を決めます。「最初から木でやると、彫り過ぎてしまうこともありますから」と池田さん。彫刻師の腕の見せどころは表情です。池田さんが作るのは、キリリとした表情の「天神様」です。眺めていると、背筋がスッと伸びるようですね。杢目の位置も計算されています。
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現代の生活に合う木彫刻
「天神様」以外にも、動植物や干支などインテリアとして気軽に飾ることのできる作品も手がけています。なかには着色してあるものもあり、素地で仕上げた作品とは違った柔らかな雰囲気を漂わせていました。「天神様」を作り続けることで井波彫刻の真の価値を現しながら、現代の生活に馴染む作品も生み出す池田さん。未来の井波彫刻を牽引する木彫刻師の姿が、ここにはありました。瑞泉寺や八日町通りを訪れた際は、ぜひ工房にも立ち寄ってみてください。
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