富山の食に欠かせない昆布
昆布は富山の食文化に欠かせない存在で、昆布消費量の上位には毎年のように富山の名が上がる。北前船交易が盛んだった江戸後期から大正期にかけて、北海道から昆布が持ち込まれて富山の暮らしに根づいたと言われているが、風化することなく継承されてきたのは、昆布の旨みや食感、出汁を好む人々、料理に活かす料理人やお母さんたちがいたからだ。そして、富山の魚や野菜、米との相性のよさも、昆布文化発展の理由のひとつだろう。
山町筋に店を構える、昆布締め専門店
富山には、魚介の刺身を昆布締めにして食べる習慣がある。昆布で挟むことで、魚介の水分が抜けて昆布の旨みが食材に浸みわたる。日本料理店や居酒屋などで一品料理として提供されることは多いが、2017年に『クラフタン』が開業する以前は県内に専門店はなかった。店主の竹中さんは「郷土料理を提供し、観光客に富山の昆布文化を知ってほしいと思いました」と話す。地元の高岡を、盛り上げたいという気持ちも大きかった。
多彩な昆布締めを生み出す
『クラフタン』は、高岡市の山町筋にある『山町ヴァレー』で店を構える。土蔵造りの町並みが、重要伝統的建造物保存地区に選定されている場所だ。いつもお店に立つスタッフさんは「観光で来られる県外の人たちは、昆布締めをご存知ないことも多いです」と言う。お店には魚介だけでなく、肉や野菜、きのこ、豆腐などの昆布締めもあり、昆布の力でおいしくなった食材の数々に驚く人ばかり。竹中さんは「地元の人にとっても珍しい昆布締めを作るのが専門店の仕事」と話す。
昆布締めの味わい方は、食べる人のお好みで
昆布締めに使うのは北海道の真昆布だ。幅が広くて厚みが均一なので、昆布締めを作りやすいという。刺身は昆布と一緒に食べるのもいいし、薬味をそえて味わうのもいい。お店で勧めているのは「煎り酒」に浸けて食べること。日本で醤油が普及する前に使われていた調味料で、梅干しや日本酒を合わせて手作りしている。昆布の穏やかで滋味深い旨みを味わうためにも、まずは何も浸けずにそのまま味わってみてほしい。
待望のお取り寄せをスタート
2022年春に、かねてからリクエストが多かったお取り寄せをはじめた。食べる時間に合わせて解凍すれば、そのまま手軽に食卓に並べられる。昆布を一枚めくると魚介が行儀よく並んで、昆布の旨さを吸収している。口に運ぶと、噛みしめるほどに深い味が広がっていく。日本酒の最高のお供なので、お酒好きの人に贈るのもおすすめ。郷土が誇る美味に舌鼓を打とう。