射水サクラマスのっけて丼 贅沢3点セット

新たな射水市ブランドの確立

鮮やかな桜色の柔らかい肉質と、口の中でとろけるような脂のりと旨味。かつて富山市の中心を流れる神通川で水揚げされていた「サクラマス」は、富山県の郷土料理「ますの寿司」になくてはならない存在だった。今では天然のサクラマスを獲ることはほぼできなくなり、希少な高級魚としてもその名が知られている。そんななか、射水市の堀岡養殖漁業協同組合を中心に養殖がスタートしたのが2013年。2024年の出荷の際には重さ3キロ超えのサクラマスが水揚げされたと報道され、射水市ブランドの新たな特産品「射水サクラマス」として注目を浴びている。

約2㎏もある立派な「射水サクラマス」
射水市の堀岡養殖漁業協同組合

“いつでも食べられる”贅沢

養殖である「射水サクラマス」の利点は美味しさや安全面に加え、貴重なサクラマスの供給が安定することだと話してくれたのは、『棚辺水産』の社長である棚辺芳彦さん。現在『棚辺水産』では「射水サクラマス」のお刺身と郷土料理である昆布締め、そのままご飯にのっけて食べられる「のっけて丼」の3つの商品を展開。春を告げる競りが過ぎたオフシーズンは直接養殖場まで取りに行き、直営店である『白エビ壱番屋』で解凍、捌いてパック詰めまで行う。道の駅など観光スポットでも販売が始まり、1日4本から5本のサクラマスを捌くこともあるという。

桜色の上質な身は柔らかく、とろけるような食感
「のっけて丼」は3種類の味が楽しめる

「射水サクラマス」の魅力を引き出す

新鮮な神経締めで処理した「射水サクラマス」は臭みもなく、解凍後1日寝かせると脂がほどよく出てトロトロになる。捌くときは骨の位置を手で確認しながら、小さな骨も見逃さないよう丁寧に取り除いていく。3枚おろしにすると骨も一緒に取れる魚と違って、サクラマスの不規則に配置されている骨は残りやすいからなのだそう。袋詰めの際は脂身など部位が偏らないように気を付けながら、身がしっかりと見えるように整える。現在、こうした一連の「射水サクラマス」の作業は全て人の手によって行われているから驚きだ。最後に商品は真空パックで冷凍庫へ。美味しさと鮮度を保ちながら、約3ヶ月と日持ちがするのも嬉しい。

小骨もしっかりと取ることで口当たりの良さが際立つ
「射水サクラマス」を存分に味わえるよう気配りは欠かさない
1つひとつ丁寧に作業が進められていく
真空パックにして冷凍することで味も馴染み、日持ちも長くなる

ご飯のお供に、お酒のアテに

お刺身と富山らしい昆布締めに並ぶのは、丼の上に乗せるだけでサクラマス丼になる「のっけて丼」。長年サクラマスに携わってきた市の担当者に相談したことがきっかけで作り始め、お墨付きもいただいている人気商品だ。タレに漬けこまれた食べ応えのある厚めの身はそのまま食べても絶品。味は「わさび醤油」と「にんにくバジル」、「炙り漬け」の3種類。漬け込む時間を調節しつつ、タレの味付けや濃さにもを試行を重ねた。一口食べると、食欲をかき立てるタレの風味とサクラマスの濃厚な旨味が見事に溶け合う。玉ねぎや卵黄、海苔などをトッピングして自分好みにアレンジするのもおすすめ。

独自にブレンドした「わさび醤油」は辛すぎずアレンジも多様
「にんにくバジル」のコクと風味はサクラマスとの相性抜群
炙ったことによる食感の違いと香りも楽しめる「炙り漬け」

苦境を照らす新たな一歩

新湊漁港の近く、1年を通して白エビがあり、冬には紅ズワイガニが店頭に並ぶ『白エビ壱番屋』がオープンしたのは10年前。しかし「こんな状況は初めて」と棚辺社長が話すように、ここ1年で射水市の漁業の様子は大きく変わった。2024年1月1日に発生した能登半島地震の影響の大きさは射水市も例外ではなく、漁港周辺施設の被害に加え、白エビや紅ズワイガニの漁獲量も減少。先行きの見通しを立てるのが難しい状況のなか、自信をもってアピールできる特産品として「射水サクラマス」が次なる一歩を踏み出した。「お客様の反応や声も活かしていきたい」と、これからの展望も見据えている。注目を集める挑戦と可能性に今後も目が離せない。

県内でも有数の白エビ漁が行われている新湊漁港
新たな挑戦は可能性に満ちている