ひんやりと甘い大福は、7種類の果物と生クリームやこし餡がやさしく溶け合う。一口ごとに違った味わいで、食べながら宝探しをしているみたい。
名手が作る氷見のフルーツ大福
昭和末期に生まれたイチゴ大福は、今やすっかり市民権を得て、冬から春にかけての和菓子店のスターの座を勝ち取った。販売シーズンになると「富山で一番好きなイチゴ大福を教えて」という会話を、時候の挨拶のように繰り返している。そこで頻繁に名前が挙がるのが氷見にある『山岸ちまき本舗』。「おまけに、ほかのフルーツ大福も推し」という会話に発展したことが何度あるだろう。評判の大福の秘密が知りたくて、2代目の山岸正さんに会いに行った。
7つの果実を包んだ、ひんやり大福
イチゴ大福を作るのは一年に4ヵ月ほど。しかし夏も買いたいという声が絶えず、夏に喜ばれるお菓子を作るのが課題になった。悩み抜いた末、ネットで冷凍食品の販売が一般的になったのを追い風に、冷凍の大福の開発に取り掛かった。3年前に誕生した「福々」は、フルーツパフェの発想で、大福に7種類の果物を使う。こし餡と一緒に生クリームを包み、羽二重餅に白餡を混ぜることで、口に運んだときの一体感も生まれた。
洋菓子の経験が、発想を豊かにしてくれる
「福々」の人気は想像を遥かに超えた。夏限定という計画はすぐに消え、発売から現在まで年間を通して作り続ける。また旬の果物を包んだ、キウイやイチジク、シャインマスカットの大福も評判で、話を聞いていると全部食べたい。山岸さんは自分のお菓子作りを「和菓子のセオリーと違うことをしているから、新しいものが生まれます」。専門学校時代に洋菓子を専攻し、修業時代も洋菓子部門のある店で働いていた経験が、発想の原点という。
両親が始めた餅屋で、修業で得た技を発揮
「ウチの店は、自分が生まれたときに母が父に漁師をやめて陸に上がってほしいと頼み、餅屋を始めたんです」と山岸さん。当初はガレージに小さなボイラーと餅つき機しかなくて、売るのは大福とちまき。山岸さんは東京の専門学校を出て、菓子店で腕を磨いた。「お菓子のリクエストが増えて、両親も困ってね。自分が入った30年ほど前に店を建て、イチゴ大福も始めました。発売した日は8個作って1個も売れなかったけれど、口コミでここまで来たんです」
お客さんが食べたいと思うお菓子を作る
「氷見のお菓子屋には、どこも看板商品がある。でもウチは餅屋だったから、時代のニーズに合ったものとか、季節のもので応えていくしかないんですよ」と山岸さん。地元のお客さんにとっては、それが一番ありがたい。最近は野菜の味や香りを生かしたお菓子の試作を、繰り返しているという。今、息子さんが母校の日本菓子専門学校で学んでいる。「お店を継がれる予定なんですか」と聞くと、山岸さんはうれしそうに笑った。
【福々10個セット】
原材料 | こしあん、生クリーム、旬のフルーツ |
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山岸ちまき本舗
創業から半世紀近くを数える、地元の人に愛される老舗菓子店。もちをはじめとした和菓子はもちろん、洋菓子も充実している。季節ごとの名物商品も多く、手土産にもおすすめ。
〒935-0051 富山県氷見市十二町3799-2
0120-134-078、0766-72-5032
8:00~19:00
無休
あり (10台)