夫婦で営む加工場
富山湾の端にある朝日町の「宮崎漁港」は、漁獲量こそ多くないが、富山湾を北上しておいしさが詰まった魚が集まる知る人ぞ知る漁港。その目の前には、『愛場商店』という夫婦で営む海産物の加工場がある。加工場が始まったのは2020年のことで、漁師でもある夫の愛場亮さんが「泊漁協」の脇山組合長から、空いている加工場を活用して水産加工品を作ることを勧められたのがきっかけとなった。
新鮮な魚だけを使った加工品
妻の千恵子さんは、以前は東京でフードコーディネーターをしていたころから、「生産者の顔の見える場所で、おいしいものを作り発信できたら」との想いを抱いていた。加工場の話は、二人にはちょうどぴったりな提案だった。始まった『愛場商店』の加工の強みは、とにかく新鮮な魚を使い、水揚げからすぐに加工できることだった。地元漁師が朝に水揚げした魚を、その日のうちに加工。出来上がった加工品は-60℃で低温冷凍し、鮮度を保つ。良い素材を活かして、保存料や化学調味料などは使用しない、シンプルな加工品を作っている。
肝が残る独特な食感の燻製
なかでも、お店のいちおしは「富山ホタルイカの燻製」。地元の海を中心に富山湾で水揚げされた大ぶりなホタルイカを海洋深層水で味付けをして、ナラの木の燻煙でじっくりと燻製に仕上げる。とくにこだわったのは食感。濃厚な肝をそのまま味わってもらうために、表面は乾きながらもしっとりとした、独特なレア食感を出している。本来であれば、地元の料亭に流通するほどによいホタルイカを使っているからこそ、楽しめる独自のおいしさだ。
全国からも注文が集まる
唯一無二な肝の食感と味わいを評価され、「富山ほたるいか燻製」は、全国商工会連合会が主催する「バイヤーズルーム2021」で「金賞」と「中小企業庁長官賞」をW受賞した。これをきっかけに、全国にも知られるようになったが、製造の手間を惜しまずに新鮮なものを届けたいという想いもあり、販路を限定して受注生産を続けている。一番おいしい状態のものを届けることで、より富山の魅力、ホタルイカの魅力を感じてもらえることだろう。