富山の食文化、鱒の寿し
鱒寿しといえば、誰もがあの丸い曲げわっぱに入った姿を思い浮かべるのではないだろうか。富山名物とうたわれ、歴史と伝統を受け継いできた名店も多い。『平ら寿し本舗』が新たな鱒寿し専門店としてスタートしたのは、2011年のこと。砺波市と南砺市の境に店舗を構え、現在は県西部にあたる呉西地区を中心に販売を行なっている。富山の食文化として、鱒寿しをより広く浸透させたい想いもあったそう。これからの鱒寿しの可能性を見据えた『平ら寿し本舗』は、業界初となる試みにも挑戦していく。
今までにない「四角い鱒寿し」
『平ら寿し本舗』の鱒寿しは四角い。すでに多くの鱒寿し店があるなかで、個性を模索したことがきっかけだった。『平ら寿し本舗』がある砺波市は、屋敷林に囲まれた農家が点在する散居村で有名だ。規則正しく整えられた砺波平野の田んぼが、主流の丸型から角型のイメージへと繋がった。四角い形には利点も多く、均等に切り分けやすいことからシェアしやすい。家での集まりや手土産にも喜ばれるため、出掛けるタイミングの午前中がよく売れるのだとか。「食べやすさ」を追求したからこそ辿り着いたかたちだ。
誰もが美味しく食べられるこだわり
鱒の寿しの基本となる材料はお米、酢、鱒とシンプルだからこそ、素材にも強いこだわりがある。お米は高岡産のものを中心に2~3種類をブレンド。酢飯には歳月をかけて開発したオリジナル酢が使われている。レア感が少し残る締め具合の鱒は、バランスのとれた油ののりを絶妙な目利きで選んだ最上級品だ。ふんわりと押すことでよりやわらかい食感となっているが、これも『平ら寿し本舗』の特徴の一つ。嚙む力が弱い人でも食べやすく、三日目でも固くなりにくい。誰もが美味しく食べられるための工夫が、随所に散りばめられている。
できたての鱒寿しを届ける
工場に併設されている直売所では注文が入ってから作り始めるため、できたてを持ち帰ることができる。人気商品「ます寿司一重」「厚切特選一重」をはじめ、程よいサイズ感の棒鮨タイプなど、状況に応じて選べるバリエーションの豊さもうれしい。新たに登場した「15切入ますの寿し」は食べやすいサイズにカットされているため、手や包丁を汚さず手軽に食べることができる。化学調味料や保存料なども使っていない。贈り物としてはもちろん、食卓を囲む一品としてもおすすめだ。
一歩引いて考える、叶えたい未来
『平ら寿し本舗』では、常に買い手の目線でいることを大切にしている。食べてくれる人がどうしたらもっと喜んでくれるのか、作り手の立場から一歩引いて考えてみるのだそう。飽きのこない食べやすさ、美味しさや安全性はそのままに、今よりも日持ちを長く味わう方法など、さまざまなことに挑戦し続けている。最近では出張教室のみだった「ます寿し作り教室」を店舗でも始めた。高校生を対象とした工場見学や鱒寿し作り体験など、行政とも協力しながら鱒寿しの普及に力を入れている。『平ら寿し本舗』が作り出す鱒寿しは、着実に新しい歴史を刻み始めている。